エンジン始動の要 セルモーターの役割と故障原因
目次
エンジン始動不良の増加とセルモーターの役割
「エンジンのかかりが悪い」という依頼が多くなってきました。
エンジンのかかりそのものにフォーカスすると、色々なケースが考えられますが
セルモーターはそもそもどういう仕事をしているのでしょうか。
そしてなぜそこが壊れるとエンジンのかかりが悪くなるのでしょうか。
今回は、このあたりをお話ししたいと思います。
セルモーター以前のエンジン始動方式
昔の車には「セルモーター」は付いておらず、フロントバンパーのところに穴が開いていて
タイヤを持ち上げるようなクランク棒っていうのがあり
クランク棒(クランクシャフト)を回してエンジンをかけていました。
クランク棒を使ってエンジンのクランクを手動で回していたという感じです。
セルモーターの構造と負担
それが現代になると、セルモーターというモーターが登場します。
クランクを回すためにはかなりの力が必要で、それこそ3周もすれば息が切れる位です。
それをセルモーターが人間の代役でグルグル回してくれます。
ものすごくモーターに負担がかかっている今の車のクランクは
とてもじゃありませんが人間の力(手動)で回すことなんてできない代物です。
そもそも燃料が薄すぎで初爆はしない、その代わりをモーターがしています。
あの機構は、ああ見えて、すごい動きをしています。
今の車はキーレスのタイプで、それこそ1回スイッチを入れれば、5秒ぐらいセルが回ってくれます。
キュルキュルって。クルクルかな。そんなモーターの速さで、ぐるぐる手で(人力)回せるのでしょうか!という話です。
それだけ大変な仕事をあの小さいモーターがしているという事は
本体にものすごい負担がかかっているのが想像できます。
一瞬にして「すごい熱を出し」、「すごい高温負荷がかかります」。
ユーザーが鍵を回した瞬間に高カロリーを出して、ユンケル100本ぐらい飲んだ勢いで出力を出しているのです。
しかもその一瞬だけのために。
という事は、あんなに小さいモーターで、それだけの力を出しているので
内部のギアも摩耗し、クランクシャフトのベアリングも摩耗します。
摩耗が進めば「いつ止まってしまうか分かりません」。
セルモーターの進化と故障原因
最近は、「小さい力で大きい働きをさせる」という高性能セルモーターに変わっています。
内部に、オートマチックのミッションであれば
プラネタリーギヤみたいな「小さい力で大きい仕事をさせる」ためにギアが3つ入っています。
普通はシャフトで直接に回すが、簡単に言えば3倍の力を出させるために、ギアを3枚にしたといったところです。
しかし残念なことに、あまりにも力がかかりすぎてこのギアが割れてしまいます。
結構しっかりした大きいギアです。
それが割れてしまうほどクランクに大きな力をかけなければエンジンは回ってくれないのです。
セルモーター自体も日々改良、改良されています。
セルモーターの寿命と交換時期
セルモーターに関しては、走った距離ではなくて、運転回数が基準になります。
エンジンを1回まわしてしまえば機構としては用がなくなるのが理由の1つです。
1度回してかかってしまえば、極端に言えば何万キロ走ろうが
次にセルモーターを使うシチュエーションが来ない限り出番がありません。
ですから、街乗りが多い人や、エンジンを止めて乗ったり降りたりが多い人はそのたびに回します。
そのような使用過程の場合は要注意です。
「大体70,000から80,000キロ」そのぐらいが1回目の交換目安です。
その程度走行したら、使い方などの状況によっては、「予防として」交換してもよろしいかと思います。
異音発生時の注意点
最近、セルモーターの回りがちょっと重い。バッテリーは新しいんだけれどもグーグーグーというか、普通だったらモーターだからエンジンが回る音しかキュキュキュっていう音しかしないんだけれど、その音がゴリゴリゴリというようなモタついた音、何かが擦れているような音。音が出ているけれど、動いている。
そんなクルマはラッキーです。
そういう音が出るような状態ですと、大体9割以上は突然動かなくなります。
(何度も経験しているので間違いないです)
最初だけガチャといって、それっきり何をやってもうんともすんとも言わないです。
その最初の音がよくわからないからバッテリー上がりかと思ってしまいます。
まさか、突然自分のクルマがそうなると予想なんてしていないからです。
けれどセルモーターが動いていないということもあります。
「バッテリーは元気なのにエンジンかからなくなっちゃって」っていうことがあります。
エンジンがかからないという事は、先ずセルが回るのか回らないのかということです。
それともセルは回るが、初爆が起きないのでしょうか。いろいろあります。
車種ごとの注意点
特に気をつけなければならないのはAクラス。なぜかクーラーの排水がセルモーターの真上にあります。
夏場エアコン(クーラー)を使用すると、排水がセルモーターの上にかかってビシャビシャの水浸しになります。
セルモーターの上に先ずこぼれて、それが下に落ちていく。ボディーの下にです。
サカモトエンジニアリングの対策
サカモトエンジニアリングでは、Aクラスのセルモーターを取り替える際には
その場所に手が入るので、必ず排水の位置を変えています。
ホースを足して長くして、バイパスみたいにしてセルモーターに水が落ちないようにします。加工するのです。
ただ、それだけの作業を単独で実施するとなると、そのためだけにエンジンを少し外さないといけなくなります。
そのような特別な作業があるので、残念ながら無償ではできません。
ぜひセルモーターの交換時は、ホースのバイパスをしましょう。
サカモトエンジニアリングスペシャルですね!
相談の推奨
124とか126の時代の個体は「ピニオンギアの固着が多い」です。
ピニオンギアというのがエンジンに飛び込みます。構造としてです。
あの年代はシャフトの油切れが多いので、古いなぁと思ったら
サカモトエンジニアリングではグリスを塗ったりして保護しています。
しかし最近のモデルは、そう簡単にはいかないので、テスターにかける必要もあります。
ぜひご相談ください。